紅き真珠の詩(うた) 第32話 逃げ道 あらすじ
張普然は崔十九を呼び出し、珍琅閣の宝石と崔氏の真珠が白草浄舎にあった件について尋ねた。
崔十九は真珠については知らなかった。
鄭知衡がやってきて、徐南英から賄賂を要求されたこと、真珠については知らないことを話した。
鄭知衡は父から棒たたきにされた。
牢の中で徐南英は血で書をしたため郢王に送ろうとした。
その手紙を見た張普然・燕子京・端午は、徐南英が徐林をつかい郢王を脅しているのではないかと考えた。
秦さんが瑠璃作りを手伝ってくれることになり、炉を築いた。
徐南英を長安に護送すると言って、王少卿がやってきた。
正規の手続きよりも早すぎる来訪であるため、張普然は勅書がなければ引き渡さないと答えた。
徐南英が毒を飲まされ…?
感想・考察
なんだかいろいろなことが起こりました。
「逃げ道」というのは徐南英が遺しておいた徐林のことでしょうか。
燕子京たちは徐林がキーパーソンだということと徐南英が郢王を脅しているということに気づきました。
この調子で燕家の事件に郢王が関わっているということを知る日も近そうだと思いました。
比較
前回、全部自分がやったことなのに その全てを白裊がやったと言って責任逃れした秦慕が出てきました。
それに対して今回は、全部崔十九が企んだのに、父から責められた鄭知衡はそのすべてを自分がやったと言いました。
鄭世元「その女(崔十九)のために鄭家は大金を失い郢王は徐南英を失った。どんな罪か分かっているのか」
「紅き真珠の詩(うた)」第32話より引用
鄭知衡「私の独断で十九は無関係です」
大金を出して珍琅閣を買ったのは崔十九が欲しがったからで、
崔十九「私たちだけの店を持ちたい」
「紅き真珠の詩(うた)」第27話より引用
徐南英の件にも崔十九が関わっていそうです。
崔十九「徐南英という古だぬきを罠にはめる」
「紅き真珠の詩(うた)」第29話より引用
それなのに鄭知衡は自分がやったと🥲
比較対象が駄目すぎる秦慕なので、かっこよかったです。
このことがあったからか、これまで鄭知衡に対して愛なんかないって態度だった崔十九の態度が変化したような!?
開店の日、鄭知衡が来ると嬉しそうな顔をし、だけど顔を引き締めてから鄭知衡の方を向き直っていました。
そしてすぐ帰ろうとする鄭知衡を引き留めてました。
ついに相思相愛になるんでしょうか!?
何が起きたのか
康琚「徐南英が鄭知衡たちと会い珍琅閣の件に介入を。計画どおりに進めば珍琅閣の主はすぐにも変わるでしょう」
「紅き真珠の詩(うた)」第29話より引用
燕子京「強欲であればあるほど破滅は早い」
という会話があったので、燕子京の計画通りことは進んでいそうです。
一方、先ほども出しましたがこのセリフがありました。
崔十九「徐南英という古だぬきを罠にはめる」
「紅き真珠の詩(うた)」第29話より引用
また、明鏡台に秦慕を使って難癖付けるというのは鄭家がやらせたことのはずなので、これが失敗した場合に白草浄舎が調べられるだろう、そこに珍琅閣の宝石が有ったら大変なことになるだろうということは崔十九にはわかっただろうと思います。
なので、徐南英がこうなったのは崔十九の計画どおりなのかなと思いました。
思い返せば広州にいる時から崔十九は徐南英に真珠をたかられて(潭王への献上品である真珠の蓮台)(6話)、張普然の始末を命じらるなど(8話)いいように使われてフラストレーションがたまっていたと思われます。
この決断は無理もないと思いました。
燕子京は崔十九がこのような行動に出るだろうと読んで、それで少しだけその計画に相乗りして、崔氏採取場の真珠を置いておいたのかなと思いました。
しかし、あの真珠をなぜあそこに置いておいたのかが、よくわかりませんでした。
徐南英が今回の収賄だけでなく、広州の時も崔氏から賄賂を受け取っていたということを示すため?
1件の収賄だけでなく常習ですから、罪を重くしてください、というメッセージでしょうか?
張普然の言葉と三省六部
王少卿「徐南英の収賄事件に関して長安への護送を拝命した」
「紅き真珠の詩(うた)」第32話より引用
張普然「命が?では中書省の詔勅を見たい」
張普然の計算によれば来るのが早すぎるということらしく、このような会話がありました。
これについて調べてみたところ、

「唐代律令制の国家機構は…(中略)…三省六部と一二衛府が代表する中央政府…(中略)…および州県制と都督府鎮戌制からなる地方機関…(中略)…によって構成される。…(中略)…三省は、政策立案機関である中書省・門下省、および行政の執行機関である尚書省からなる。…(中略)…尚書省は、…(中略)…文書行政を扱う機関である。実際の行政実務は太常寺・太宰寺など九寺とよぶ九つの機関が、関連する六部からの文書による指令を受けて実施した」
渡辺信一郎著「中華の成立唐代まで シリーズ中国の歴史①」 岩波書店 2019 p207,208
ということで、基本的に王少卿の属する大理寺は、尚書省から文書による指令がないと行政実務を行うことはできないということのようです。
張普然は「中書省」と言っていましたが、これはもしかしたら張普然は皇帝に対して奏状を送っているので、皇帝が何か命令する場合には中書省を通して指令が来るということなのかもしれないと思いました。
(有識者の方、ご存じでしたらご教授願います🙇♀️)
とにかく、九寺は文書がないと行政実務を行うことはできないはずだ、ということを張普然は指摘しており、文書を持っていないということは、王少卿が来たのは正規の手続きから外れた何らかの力によるもの、ということなんだろうと思いました。
徐南英の言葉の意味
徐南英「(張普然の)今の立場では私を罪に問えぬ。私を裁きたくば長安に着いてからだ」
「紅き真珠の詩(うた)」第32話より引用
このように徐南英は言い、余裕の表情でした。この点については、
「九寺のほかには、実務機関として少府監・将作監などの作事官府や人材養成機関である国子監が置かれ、また再審案件の審問や官僚の犯罪を摘発する観察機関として御史台が置かれた」
渡辺信一郎著「中華の成立唐代まで シリーズ中国の歴史①」 岩波書店 2019 p208
どうやら官僚である徐南英は御史台の管轄なので秦慕に対してのように張普然が裁くことができないということなのかなと思いました。
その後
張普然「陛下には既にに経緯を奏上してあり」
「紅き真珠の詩(うた)」第32話より引用
と張普然が言うと、徐南英は態度を変え慌てふためき なりふり構わず助けを求めました。
「中国の律令の基本的性格として、皇帝という専制君主による法であったことがあげられる。…(中略)…皇帝は新しい法の制定者であり、律令法の最終的な権威である。名例律18条に「非常の断、人主之を専らにす」と、非常の場合には皇帝が自由に裁断できるとある。皇帝は律令法に拘束されない超越した存在であり、律の精緻な刑罰・裁判体系を破ることができるのである。」
大津透著 「律令国家と隋唐文明」岩波書店 2020 p76,77
その点に関しては、皇帝が関わってくれば、全部の手続きを無視して裁かれる可能性があり、もちろん郢王も助けることができないからなのだろうと思いました。
徐南英に毒を盛ったのは誰なのか?
徐南英が毒を盛られたらしいということで、いったい誰の仕業?というのが気になるところです。
王少卿を送ったのは郢王なのでは?
という気がするので、郢王なんでしょうか?
林医師「動かせば命にかかわります。…(中略)…死には至りませんがしかと静養が必要です」
「紅き真珠の詩(うた)」第32話より引用
ということで、死にはしないけれど揚州から出られなくなる毒のようです。
王少卿を送ってきた人は、徐南英を長安に護送したい人ですから、動けなくなる毒を飲ませたりはしなそうです。
つまり、毒を飲ませたのは徐南英に揚州にいて欲しい人?
燕子京でしょうか?
燕子京は徐南英が郢王の弱みを何か握っていると気づいており、それについて知りたいと考えているかもしれません。
だからまだ揚州にいて欲しい、というような感じでしょうか?
天国に召される訳ではない毒を飲まされたというのが気になるところです。
もし仮に徐南英がなくなってしまったとしても、徐林が郢王の悪事の証拠を持っているので、徐林さえ見つけることができれば、燕子京は多くを知ることができ郢王を破滅に追い込むこともできそうですね。
来週は第33話「絶好の商機」第34話「急転直下」です。
33話は、秦さんの炉が完成したので瑠璃の生産を開始することができて明鏡台が大繁盛する、という話になるでしょうか?
その裏で徐南英を巡る王少卿とのやり取りもありそう?
第34話「急転直下」。
急転直下の意味は、様子が急に変わり、物事の解決・決着がつくことらしい(参考:急転直下(キュウテンチョッカ)とは? 意味や使い方 – コトバンク)ということで、もしかして郢王が退場となるんでしょうか?
郢王が片付いてももう1人いますから、そろそろ郢王が退場かもしれませんね。
色々な駆け引きがありそうで、今回の続きがとても楽しみです。


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