このミステリーがすごい!2025年海外編の第1位が馬伯庸さんの「両京十五日」だと知り、読んでみました。
馬伯庸というお名前は、「長安二十四時」「風起隴西」「風起洛陽~神都に翔ける蒼き炎~」などの原作者様として記憶していました。面白さは折り紙付きです。
「両京十五日」というタイトルを見て、もしかして、あの話じゃ?と思うものがあり、あらすじを見て間違いないと確信し、読み始めました。
これまでドラマで見てきたこととはまた違った素晴らしい味付けがされており大変楽しんで読みました。
私が読んだものはⅠ凶兆、Ⅱ天命という2巻構成になっていたのですが、特にⅡ天命編で明かされる熱い真実(フィクションですが)には、飛び跳ねるほど歓喜しました。
「両京十五日 Ⅰ凶兆」あらすじ
洪熙帝が即位すると、南京では地震が相次いだ。
今日の地震で郭芝閔という監察御史が梁の下敷きになり亡くなった。
誰もが事故死だと考える中、薄のろダメ息子と評判の捕吏・呉定縁だけは、他殺だと見抜いた。
南京への遷都を決意した洪熙帝は、皇太子朱瞻基を南京に派遣した。
朱瞻基の乗った宝船は、南京に到着するや否や、大爆発した。
太子を出迎えるため南京の百官は埠頭に集まっていた。
彼らが爆発に巻き込まれたため、南京は大混乱となった。
これほどの大爆発、誰も助からなかっただろうと思われる中、呉定縁は、宝船から落ちた若い男を捕らえた。
唯一生き残ったこの男こそ犯人に違いないと考えた呉定縁は、男を錦衣衛に護送した。
錦衣衛で男は、自分こそ朱瞻基だと騒ぎ、太子の顔を知っていた于謙も太子だと保証した。
何度も命を狙われる太子。
誰が敵か味方か分からない。
朱瞻基は、身分を隠し北京を目指す…!
見どころ
冒険&成長
「尚食(しょうしょく)~美味なる恋は紫禁城で~」「大明皇妃(だいみんこうひ)-Empress of the Ming-」等、宣徳帝の時代を描いたドラマを見た方ならきっと知っている15日間を、じっくり描いた作品になっています。
朱瞻基はまだ完成されていない未熟な青年といった様子で登場します。
尊い身の上ながら柔軟な心を持つ朱瞻基は、共に冒険することになる仲間たちの言葉や旅の途中で出会う人々に影響されて、賢帝といわれる宣徳帝が完成されていきます。
その過程を見ることができる濃密な15日間の大冒険、時間がある方は是非読んでみてください。
于謙に言われた時には反発した言葉を、朱瞻基が言った時には泣きそうになりました。
歴史可能性小説
「中国では馬伯庸氏は「”歴史可能性小説”の探索に力を入れている」と評価されています。(『長安的荔枝』、著者紹介) 」
馬伯庸(著)斎藤正高(訳)泊 功(訳)2024「両京十五日Ⅰ凶兆」早川書房 p.471より引用
Ⅰ巻 巻末「訳者のあとがき」で、このような説明がなされていました。
この本もフィクションが織り交ぜられていますが、その織り交ぜられているフィクション部分にロマンがあふれすぎていました。
「永楽帝~大明天下の輝き~」を見て悲しんでいた心、「尚食(しょうしょく)~美味なる恋は紫禁城で~」を見て消化不良になっていた心が救われた思いがいたしました。
朱瞻基は、于謙、呉定縁、蘇荊渓という3名とパーティーを組み、4人で旅をすることになります。
于謙は、「大明皇妃(だいみんこうひ)-Empress of the Ming-」を見た方ならお馴染みの人だと思うのですが、他2人は誰?って感じですよね。
この2人は謎が多く、本人すら知らないこともあったりします。
その2人についても、旅をしていくうちに徐々に謎が解明されていきます。
ミステリー?
「このミステリーがすごい」海外編の1位なので、ミステリー部分に期待すると思います。
いわゆる犯人捜し、クローズドサークル、密室、アリバイ崩し、脳がバグる1文などなど。
「最初、この小説を書こうと思ったときには、単純に冒険物語を書きたかっただけだった。」
馬伯庸(著)斎藤正高(訳)泊 功(訳)2024「両京十五日Ⅱ天命」早川書房 p.493より引用
と「物語の周辺について」という巻末頁の部分で作者本人は書いています。
そのため大部分は冒険物語です。
密室もアリバイも出てきません。
冒険の中で、あの伏線をここで使うか!などの驚きはありましたが、どの辺がミステリーなのか途中までわかりませんでした。
全ての黒幕は知ってしまっていましたし、その部分は恐らく中国人なら常識なので、ミステリーには当たらないだろうと思われたからです。
しかし、ばっちりミステリーしてました。
分類で分けるとすると、「脳がバグる」系のミステリーではないかと思います。
お時間とご興味がある方は、是非、この冒険ミステリーを楽しんでみてください。
コメント